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まだ終わっていない物語がどのように始まったか (ナオミの追悼記)
ご存知の方もいるかと思いますが、つい先日ロンドンで刑務所の移送車が、刑務所制度に反対して運転を妨害しようとした女性をひき殺す事件がありました。当たり前ですがメディアはこれが刑務所制度への反対行動の一部と見られることなど詳細は明らかにしておらず、運転手も現在は仮釈放中。これに対して現地ではデモがあり、また各地で抗議の連帯意思表示など行われています。
追悼の意を表してここにメインストリームメディアでは描かれていない事件の内情と抗議/抵抗行動の詳細を掲載します。

まだ終わっていない物語がどのように始まったか (ナオミの追悼記)
「4月23日水曜日の朝私たちは、ある女性が、午後5時半頃に囚人を法廷からブリクストンの刑務所に連れて帰る刑務所のヴァンによって轢かれたと聞いた。その地域に駆けつけ新聞を手に入れた。」
『彼女は30歳(注:実際は34歳)で酔っぱらっていた』、『彼女はいつも踊ってばかりいた』と新聞は書いていた。即座に私には分かったーそれが彼女であること、2-3週間前「Food Not Bombs(爆弾ではなくて食料を)」の時リッツィーシネマの前で私に踊ろうよと手招きをしていたあの女の子だった。その日はKとLが無料の食べ物を配布したことで逮捕された日だった。大きなスマイルが広がる美しくクレージーな黒人の女の子!君の心の中に一筋の雷光のように入っていく、ナオミはそんなだぐいの人々の一人だった。
痛みと怒りで喉が詰まらせながら私たちが「Brixton Oval(ブリクストン・オーバル)」に着くとナオミの友達が立てた祭壇があった:彼女がいつも来ていたマルボロのジャケット、愛用のスケート、2-3のぬいぐるみ、写真、花、キャンドル、線香。皆泣いていた。男も女も、若者も年寄りも、黒人も白人も。怒りと絶望の涙が皆のうちひしがれた顔の表面を瀧のように流れていた。彼らはナオミがしていたように、リッツィーシネマの外のセンターの草の茂った所でよくぶらぶらしている人々である。私たちはお互いに抱き合い泣き、そして合意した(?)私たちはキャンドルの前に静かに座り追悼の儀式をやるだけでは終わらせない。行動を起こす必要がある!!!ナオミは政府によって殺害された!!! クソーッ!!!
SERCO(刑務所の経営会社)の刑務所バヴァンを運転していた民間警官は、ナオミが道の真ん中で踊っているのを見た。そして、11人の収容者という荷下ろしを急ぐ人間積荷を載せたヴァンを、ナオミが拳で叩いているのを見たのだ。『この人たちを刑務所に連れて行くな!!!』彼女は叫んでいた。
運転者は彼女を見たのだ。しかし信号が変わった時に、彼はアクセルを踏んでナオミを突き倒し、轢き、引きずった。ナオミはヴァンの下で、彼女に届こうと這ってもぐり込んだ友達のそばで死んだ。百人ほどの人々の群衆が集まり、驚き呆れ『人殺し!!!』と叫んでいた。ヴァンのウィンドスクリーンが割られた。殺し屋を保護するために機動隊が招集された。もちろん今その殺し屋は仮釈放中である。
政府の抑圧のために奉仕する獣にとって、いつも踊っていた酔っぱらいの黒人の女の子の命が何だというのか?バスの運転手にとっての、ロックコンサートから去るところの同士の命と同じくらいの物だろう。
私たちの怒りを声に出して叫ぶ必要がある!! 全員で!! 一緒に!!
地元の印刷屋にさっと駆け込むと、新聞記事のコピーが拡大されてラミネートコーティングされている。印刷屋はこの話のいきさつを知り、無料でもっと印刷してくれる。通りがかりの人が立ち止まる。噂が広まるにつれて、人々が到着し始める。ブリクストンのマーケットにひとっ飛びして、バナーを作るための布を手に入れる。通りが閉鎖される。オーケー!3メートルの黒い布。さらに人々が現れる。急げ!絵の具がいくらかとブラシにスポンジ。布は歩道に広げられ、手元の確かな2-3人が作成に取りかかる。ナオミの友人たちが決定し全員が合意した言葉:「システムによって殺されたナオミの復讐を」が浮かび出す。どこからか二つの長い棒が出現し、バナーが組み立てられる。既にコースは決まっている。刑務所までブリクストン通り沿いに歩き、途中にある刑務所のヴァンはどれでも妨害する。
背の高い黒人の男たちがバナーを持つ。彼らはそわそわしている。さあ、行くぞ!マーチが性急に結集する。ほとんど整列していないので、マーチは大きな通りを占領する。ぶらつく人たちもいれば、舗道を歩いてついてくる人たちもいる。ナオミの友達からなるこの有象無象を前にして、ブリクストン通りのひどい渋滞もカタツムリの歩みほどに遅くならざるを得ない。ビール缶を握りしめた人たちが数人、アナキスト、スクワッター、ラスタファリアン、パンクたちが2 -3人ずつ:システムの殺し屋を糾弾するために出てきたブリクストンの「くず」たち。これが人生初のデモだという人たちもいる。警察の車が現場に到着し、マーチの後からついてくる。叫び声が出始める。最初はとりあえず「No justice! Nopeace! (正義も無く!平和も無い!)」そしてマーチ全体が「NO JUSTICE, NOPEACE, FUCK THE POLICE!!! (正義も無く!平和も無い!警察くたばれ!)」と叫び出す。叫び声はどんどん大きくなる。全員が声を張り上げて同調している。「NOJUSTICE, NO PEACE, FUCK THE POLICE!!!! NO JUSTICE, NO PEACE, FUCK THEPOLICE!!!! THE PASSION FOR FREEDOM IS STRONGER THAN THE PRISON!!!(正義も無く!平和も無い!警察をやっつけろ!自由への情熱は刑務所より強い!!!)」何百という車やバスがのろのろと道を下ったり上ったりする。警察のヴァンが慎重に脇道にとめられているが、全体として警察の活動は控えめである。ブリクストンはブリクストンだ。人々がじろじろと見る。黒人の小学生たちが振り向く。警察をやっつけろ?おー!
マーチが刑務所に到着する。舗道で止まらずに、車道をなだれのように進む。警察の車が周りを囲む。警察と看守が一列に整列する。ヴァン一台分の婦人警官と看守が現場に到着する。二人のやせ細った女性がよろよろとぶらついていて、今にも地面に倒れそうである。彼女たちは自らの怒りと痛みを投げ出し、警官に向かって叫ぶが、警官は動じない。(ブリクストンの警察は皆ナオミを知っていた。彼らは内情を知っていて、明らかに厳密な指示を受けていた。)痛みとアルコールで歪んだ顔を涙が濡らす。ナオミが死ぬ必要はなかった!あれは事故じゃない!運転手は車を止めることができたはずだ!ナオミは殺されて、殺人を犯した者が自由に歩き回っている!正義も無く、平和も無い。警察をやっつけろ!!!正義も無く、平和も無い。警察よ、くたばれ!!!自由への情熱は刑務所よりも強い!!!
あらゆる種類の面白いキャラクターが刑務所の敷地から出現してくる。警官が少し圧力をかけ出し、マーチは後退する。ブリクストン通りの入り口へと戻る。そしてそこに10分ほど留まると、また主要道路を占領し、街の中心部をめがけてゆっくりと歩いて行き、ナオミが冷酷にひき殺された場所を再度通過する。叫び声は中心街までずっと続く。
仕事の時間が終わり、新たな人々が進化をとげつつあるナオミの記念碑(さらに多くの花が寄せられ、ラスタファリアンの旗に代わって新聞記事が置かれている)の周りに集まっている。警察が列をなして舗道から人々を排除しようとするが成功せず、結局自分たち自身で舗道を埋めてしまう。お決まりの地元レポーターが、カメラマンを完備して到着した。権威者たちのグループが草のある所に並んで写真撮影やインタビューを受けているので、ナオミの友人たちはその背景へと消えて行くようだ。雰囲気が変わってきている。私たちは今日のところはこれで終わりにしよう。その日を共にした同士たちと抱擁を交わす。また会う日まで。
「くず」であることを誇りに思うJ.とB.(記)
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注: この殺人事件が起こる前の晩(2008年4月22日)、群衆がブリクストンを通って囚人を移動中の別のSERCOのヴァンを妨害し、その状況を解決するために警察が呼ばれなければならなかった。この白昼の中心街における若き女性の明白な殺人事件はシステム―刑務所システムーへの抵抗という文脈でおきたということは、メインストリームのメディアを通して公に報告されてはいない。そして私たちは、これ以上の絶望的な苦しみや「コミュニティ調停」の代わりに、権力へ返す適切な答えを望みそして実行するのみである。刑務所に炎を。